抗HIV治療ガイドライン(2024年3月発行)

XV小児、青少年期における抗HIV療法

3.小児におけるHIV感染症のモニタリング

 小児のCD4数の正常値は年齢によって異なるので、これまで6歳未満では年齢によるばらつきの少ないCD4パーセントを免疫学的マーカーとして用いることが勧められてきた。しかし短期的な病勢予測には6歳以上と同様にCD4数が有用であるとする研究結果が示されたことから7)、1歳以上の小児で治療の開始にあたってCD4の数とパーセントが乖離する場合、免疫学的マーカーとしてより低値のものが重視される。HIV感染小児のケアにおいても、免疫状態の把握が必須であるので、感染が確認されたら直ちにCD4数・パーセントを測定し、その後も3〜4ヵ月おきに測定することが勧められる(1歳未満ではステージの進行が早い傾向にあるため、1〜2ヵ月おきの測定を勧める専門家もいる)。米国CDCが2014年に改訂した年齢別CD4数によるHIV感染症の免疫学的ステージ8)を表XV-1に示した。また、同じくCDCによる小児HIV感染症の臨床分類を表XV-2に示した。

 血中HIV RNA量も成人と同様にモニターするが、小児は成人に比して一般に血中HIV RNA量が高い。周産期に感染した場合には、通常、出生時は低いが(<10,000コピー/mL)、その後生後2ヵ月目まで急速に増加して(多くが10万コピー/mL以上となる)、1歳以後の数年間でゆっくりと低下しセットポイントに落ち着くことが知られている9)。血中HIV RNA量が高い患児のほうが病期の進行が速い傾向にあるが、12ヵ月未満では病期進行リスクを示唆するRNA量の閾値を決めることは難しく、12ヵ月以降では10万コピー/mL以上が高リスクと考えられている10, 11)

表XV-1 年齢別CD4数によるHIV感染症の免疫学的ステージ(CDC, 2014)
免疫学的
ステージ
CD4数(/μL)
(%)
1歳未満 1~5歳 6歳以上
1 ≧1,500
(≧34)
≧1,000
(≧30)
≧500
(≧26)
2 750-1,499
(26-33)
500-999
(22-29)
200-499
(14-25)
3(AIDS)§ <750
(<26)
<500
(<22)
<200
(<14)
表XV-2 小児(13歳未満)HIV感染症の臨床分類(CDC, 1994)
N群(無症候) HIV感染症によると考えられる症候がない、またはA群の症状の1つがある
A群(軽症) B群またはC群の症状が無く、以下の症状のうちの2つ以上がある
リンパ節腫脹(対称性を1つに数え、0.5cm以上の2ヵ所)、肝腫大、脾腫大、皮膚炎、耳下腺炎、反復性または持続性の上気道炎・副鼻腔炎・中耳炎
B群(中等症) A群の症状の他に、以下の例を含むHIV感染症による症状があるがC群の症状はない
30日超の貧血(<8g/dl)好中球減少(<1000/µL)血小板減少(<10万/µL)細菌性の髄膜炎・肺炎・敗血症、生後6ヵ月以降で2ヵ月超のカンジダ症・鵞口瘡、心筋症、新生児サイトメガロウイルス感染症、慢性下痢、肝炎、反復性単純ヘルペス口内炎、新生児単純ヘルペス性気管支炎・肺炎・食道炎、2回以上または1皮節以上の帯状疱疹、平滑筋肉腫、リンパ球性間質性肺炎(LIP)腎症、ノカルジア症、1ヵ月以上続く発熱、新生児トキソプラズマ症、播種性水痘
C群(重症) AIDS指標疾患(LIPを除く)の症状がある

PAGE TOP