X免疫再構築症候群
2.リスク評価
抗HIV治療を開始する前に免疫再構築症候群の発症リスクを把握できることは、抗HIV治療中の経過管理にとって有益な情報の一つとなる。Frenchら7)は、免疫再構築症候群を起こした症例は起こしていない症例に比べ、抗HIV治療開始時のCD4陽性Tリンパ球数(以下、CD4数)が低く(88 vs 237/μL、P=0.0001)、血中HIV RNA量が高い(5.36 vs 4.88 log10コピー/mL、P=0.007)と報告している。厚生労働省「HAART時代の日和見合併症に関する研究」班(主任研究者:安岡 彰)もCD4数が50/μL以下で、血中HIV RNA量が10万コピー/mL以上の症例では抗HIV治療時に免疫再構築症候群の発症に注意すべきである8)としている。
表X-4には、Walkerら9)の総説に記載されている免疫再構築症候群の危険因子を示す。今後のさらなるデータ集積が求められるが、表に掲げたような因子をもつ症例に抗HIV治療を始める場合には、免疫再構築症候群の発症に注意しながら経過をみていく必要がある。また、Dutertreら10)はインテグラーゼ阻害剤をベースとする抗HIV治療では入院を要する重篤な免疫再構築症候群を発症するリスクが高いと報告している。Wijtingら11)はATHENA(AIDS Therapy Evaluation in the Netherlands)コホートを後方視的に解析し、インテグラーゼ阻害剤を含む抗HIV治療は免疫再構築症候群の発症リスク(オッズ比 2.43、95%CI:1.45-4.07)であるが、入院率や死亡率を増やすことはなかったと報告している。一方でKityoら12)は、キードラッグをラルテグラビルと非核酸系逆転写酵素阻害剤の2群に分け比較した無作為試験では免疫再構築症候群の発症率に有意差を認めなかったと報告している。しかし、その後もインテグラーゼ阻害剤が免疫再構築症候群の発症リスクであるという報告とそうでないという報告とがあり13-16)、まだ確定的な結論には至っていない。抗HIV治療の選択薬剤が免疫再構築症候群発症のリスクに関連するのかどうかは今後のデータ集積を待つ必要があると考える。
表X-4 免疫再構築症候群の発症に関連した危険因子
宿主 |
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病原体 |
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治療 |
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