抗HIV治療ガイドライン(2024年3月発行)

XIIHIV/HBV共感染者での抗HIV療法

2.HIV/HBV共感染におけるHBV genotype A(Ae)の役割

 HBVは、HBV遺伝子の全塩基配列の8%以上の相違に基づいてgenotypeが規定され、A-Jまでの10種類が報告されている。HBVのgenotypeにより病態に違いがあり、その国際的・国内的分布に地域差が認められる。本邦では従来genotype BとCによる垂直感染、水平感染が主体であった。折戸らによる1999〜2000年の調査では、B型慢性肝炎におけるHBVのgenotype A,B,Cの割合はそれぞれ1.7%,12.2%,84.7%でありそれを裏付けていた6)。ところが近年になってHBV感染の水平感染はgenotype A、特に欧米に多いA2(Aeともよぶ)が主体となってきている。山田らは、首都圏におけるB型急性肝炎でのgenotype Aの比率は、1998年から2001年では35.3%、2002年から2005年では41.5%であったのに対し、2006年から2008年では73.0%と急増していることを報告している7)。元来、HBVのgenotype Aでは、B型急性肝炎の肝障害の程度はgenotype Cと比較して軽いが、HBs抗原の消失までの期間は長く、慢性化率はgenotype Cと比較して高くなる傾向にあることが知られてきた。加えて、HIVによる免疫異常は、HIV/HBV共感染者での慢性化率を23%にまで高めるとも報告されている8)。本邦におけるHIV/HBV共感染者のHBV genotypeはAが主体であることは、2001年に鯉渕らが報告しており9)、前述の小島らの報告3)もこれを裏付けるものである。HBVのgenotype A〜Dについては、2010年11月よりEIA法を用いた判定法が保険収載されたので参考指標となり得るであろう。

 MSMでのB型急性肝炎罹患は、HIV感染後にも頻繁におきる可能性があり、水平感染であっても慢性化する可能性が十分あることを念頭に置くことが重要である。

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