抗HIV治療ガイドライン(2024年3月発行)

XIIHIV/HBV共感染者での抗HIV療法

7.HIV/HBV共感染におけるB型慢性肝炎の治療適応と治療薬の選択

 HIVまたはHBV感染症に対する治療適応がある場合には2剤以上の抗HBV活性を有する多剤併用抗HIV療法を始めることとなる(表XII-2)13-15)。DHHSのガイドラインにおいてCD4数に限らずHIV治療開始を推奨する(AI)ことから、HIV/HBV共感染者に対する治療もCD4数や血中HBV DNA量に関係なくテノホビル(TDFもしくはTAF)と、エムトリシタビン(FTC)もしくはラミブジン(3TC)の2剤を含むARTレジメンで治療することが推奨される(AI)13, 14)。抗HBV作用薬が3TCもしくはFTCだけの治療は推奨されない(AII)13, 14)。また、ARTレジメンを変更する際も抗HBV活性のある薬剤を継続するべきである(AII)13, 14)。テノホビルはwild-typeのHBVやラミブジン耐性HBVに対しても有効である13, 14)。TAFはTDFよりも腎・骨への悪影響が少ないといわれ、HIV/HBV共感染例のSwitch studyではTDFを含むレジメンからEVG/cobi/TAF/FTCに変更してもHBV抑制は維持・達成され推算糸球体濾過量(eGFR)や骨マーカーは改善した24)HIV/HBV共感染例で初回治療にTAF/FTC/BICとTDF+FTC+DTG の2群でHBV関連マーカーの経過をみたランダム化比較試験(ALLIANCE試験)では、96週の観察期間におけるHBe抗原のセロクリアランス率およびセロコンバージョン率はTAF 群で有意に高かったことが示されている25)。単独HBV慢性肝炎における研究ではこのようなTAF群とTDF群の有意差は報告されておらず、今後の長期成績が注目されている。

 「B型肝炎のみに治療適応がありHIV感染症に治療適応がない・あるいは治療を望まない」という状況は非常に稀であるものの、2009年以降の抗HIV治療ガイドライン上では、このような場合には、Peg-IFNの使用が考慮される(CIII)13, 14)が、肝硬変の場合には使用できない。HIV/HBV共感染者に多いHBV genotype Aは他の遺伝子型に比べてインターフェロン製剤の効果が高いことが知られている。

表XII-2 HIV/HBV共感染患者に対するHIV治療の考え方
  治療薬
推奨
  • NRTIとしてTDF/FTC,TAF/FTCまたはTDF+3TCを使用(AI)。
  • HBVの薬剤耐性化を防ぐために、3TC, TDF, TAF, FTCを単一の抗HBV薬として使用しない。
代替
  • 「TDFまたはTAF」の使用が好ましくない場合は、ETVを抗HBV薬として使用し、同時に十分なHIV抑制作用を持つ抗HIV治療を併用する(AII)。
  • 3TC耐性のHBVを有する(または疑われる)患者では、ETVを0.5mg/日から1.0mg/日へ増量する。
  • HBVだけを治療する場合にはペグインターフェロンを検討する(CIII)。

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