抗HIV治療ガイドライン(2024年3月発行)

XIIIHIV/HCV共感染者での抗HIV療法

15.DAAによるHCV排除後のフォローアップ

 DAAによってHCVの排除が得られると炎症および線維化の改善が期待される。進展した線維化を有するHIV/HCV共感染例においても線維化が改善することが報告されている128, 129)

 HCV排除例が増える今後特に問題となるのはSVR後の発癌である。HCV単独感染では肝線維化進展例、高齢者など発癌リスクの高い症例ではインターフェロンによるウイルス排除後にも発癌のリスクは残存することがわかっており130-134)、ウイルス排除後も定期的にフォローアップを行う必要がある。インターフェロン治療後のフォローアップ期間については、未だ一定の見解はないが、症例毎の発癌リスク要因に応じて、SVR後5〜10年間は肝癌のスクリーニングを行うべきと考えられる。

 さらに、DAAによるHCVの排除後にIFNと同程度の発癌抑制が得られるかどうかに関しては賛否両論がある135)。現在のところDAAによるHCVの排除後の予後は肝線維化進展例においても改善されるという報告136)、HCV単独感染例と変わりないという報告137)が出されているが発がん例はゼロではない。従って、DAAによるHCV排除後は、注意深い肝発癌スクリーニングが必要である。ことに、高発癌リスクである高齢かつ線維化進展例においては厳重にフォローアップを行うことが推奨される138)。HIVとの共感染例でもDAA併用療法後早期に発癌する症例があり、今後注意が必要である139)。現在のところDAAによるHCV排除後の肝がんスクリーニングに関するレコメンデーションは出されていないが、治療前に行っていたスクリーニング(肝線維化進展例では4〜6ヶ月毎の血液腫瘍マーカー検査+腹部超音波検査、肝線維化非進展例では年1回の血液腫瘍マーカー検査+腹部超音波検査)が行われることが多い。いずれにしてもHCV排除後の生活管理が重要であり、代謝異常の是正・コーヒーの摂取などによる酸化ストレスの軽減、禁煙などが肝臓病死を防ぐ上で重要である140)

 HIV/HCV共感染例でHCVの排除された後でも発癌リスクが残ることも報告されるようになってきた。ヨーロッパからはDAAによるHCV排除後に平均55ヵ月の経過観察期間で中央値22.5ヵ月の時点で肝細胞癌の発生を約10%の患者で認めたと報告され、長期経過観察の必要性が提起されている。肝細胞癌の既往、Child-Pughスコア高値、HCV Genotype 3などが予測因子であるとされている141)。脂肪肝の合併もリスクとなること142)、生活習慣の改善(減量・節酒・節煙)が大切であること143)など単独感染例同様の注意点が現在のところ挙げられている。また、HCVの排除後にはコレステロール、特にLDLコレステロールの上昇が見られることにも注意が必要である144)

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