XIIIHIV/HCV共感染者での抗HIV療法
4.HIV感染症がHCV感染症の自然経過に及ぼす影響
慢性HCV感染患者は単独感染の場合に比べて重複感染の方が線維化の進行が速いことが知られている。Benhamouらによれば、HIVの重複感染があると約1.5倍の速度で線維化が進展するとしている37)。また、平均2.9年間隔で2度の肝生検を行ったSulkowskiらによれば、24%に明らかな線維化の進展が観察されたという38)。線維化進展の危険因子としてはアルコール摂取、年齢、CD4数が200/μL未満39)、ビタミン25(OH)D3の血清濃度が報告されている40)。線維化亢進のメカニズムは複雑であるが、HIVがHCVの複製を亢進させ、この際にTGF-βの活性化を伴うこと41)、HIVが肝臓の星細胞に感染してコラーゲンなどの合成を亢進させること42)、腸管のCD4陽性T細胞の枯渇により吸収されやすくなったLipopolysaccharide(LPS)が肝臓のKupffer細胞からのTGF-β等の分泌を亢進させること43)などが明らかにされている。末梢血のCD163がHIVの共感染があると活性化され、肝線維化進展に関与することも報告された44)。また、血漿中のfibroblast growth factor 2 (FGF-basic)、sCD14も重複感染例における肝線維化と関連している可能性があることが報告された45)。線維化の進展予測の方法として7つのmiRNAが有用であることも最近報告された46)。
また、共感染例では、HCV単独感染に比べHCV RNA量が、平均して0.5〜1 log高いことも知られている36)。ただし、共感染例におけるC型慢性肝炎の進行が速いことと、HCV RNA量が多いことの間に関連性が存在するかどうかは明らかではない。