抗HIV治療ガイドライン(2024年3月発行)

III抗HIV治療の基礎知識

3.血中HIV RNA量(ウイルス量)が検出限界未満(あるいは200コピー/mL未満)の臨床的意義について

 効果的なARTにより血中HIV RNA量を200コピー/mL未満に持続的に抑制することにより性的パートナーへのHIVの感染を防止できる(Undetectable = Untransmittable; U=U)11-14)ことが臨床試験により示されている15, 16)。これは従来より「予防としての治療」(Treatment as prevention; TasP)と呼ばれていた考え方をさらに一歩進めたものと言える。該当する治療状況のHIV陽性者から性行為によってHIV陰性の性的パートナーへの感染リスクは「ゼロである」とCDCは宣言した。

  • 医師はHIV陽性者に『良好な服薬アドヒアランスを維持することにより血中HIV RNA量を200コピー/mL未満に持続的に抑制することによって性的パートナーへのHIVの感染リスクはゼロである(AII)』というメッセージを伝える必要がある。
  • 予防のためには高い服薬アドヒアランスを維持することが必要である(AIII)。服薬アドヒアランスの低下している期間や治療中断の間には性感染がありうる(AIII)ことをHIV陽性者に知らせなければならない。
  • ARTにより血中HIV RNA量を200コピー/mL未満に持続的に抑制しても、他の性感染症の感染は防げない(AII)ことも併せてHIV陽性者に伝える必要がある11)
  • 医療資源の限られた国を中心としたシステマティックレビューにより、血中HIV RNA量を1,000コピー/mL未満に持続的に抑制することにより性的パートナーへのHIVの感染をほとんど防止できることも報告された17)

 U=Uについて医療従事者から伝えられたHIV陽性者では伝えられていない陽性者に比べ健康アウトカムが有意に良好であり、医療従事者以外から情報を得た場合よりも良好であった18)と報告されている。新規に診断されたHIV陽性者のみならず、すでに服薬しているHIV陽性者に対してもU=Uについて情報提供することが必要である。

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