V初回治療に用いる抗HIV薬の選び方
9.曝露前予防を行なっていてHIV感染症に感染した場合について
2022年11月、「日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PreExposure Prophylaxis)利用の手引き」85)が日本エイズ学会から発行された。日本では2024年3月現在TDF/FTCやTAF/FTCはHIVの予防を目的としての薬事承認が得られていない。PrEP開始前のHIVスクリーニング検査を適切に受検していない場合、開始時にウインドウ期でスクリーニング検査陰性の場合、PrEPのアドヒアランス不良などの場合には、HIVに感染後もTDF/FTCやTAF/FTCなどの治療としては不十分な2剤を気付かずに内服していることとなり、それによる抗HIV治療開始前の薬剤耐性変異獲得が本邦でも報告されている。PrEPを内服していてHIVに感染した場合には、抗HIV治療開始前に上述の薬剤耐性検査を迅速に必ず行う。結果が判明する前に医療費助成の制度が取得できて抗HIV治療を開始する場合には、サルベージ療法を考慮する(第VII章参照)。TAF(またはTDF)とFTC(または3TC)に、DTGまたはBICまたはブーストされたDRVの組み合わせも考慮可能な選択肢であるが、薬剤耐性の結果が判明してから必要に応じて専門医療機関に相談して治療薬を再考する。
また、日本では2024年3月現在カボテグラビル(CAB)注はHIVの予防を目的としての薬事承認が得られていないが海外などでCAB注によるPrEPを受けていてHIVに感染した場合には、インテグラーゼ阻害剤に対する薬剤耐性変異を獲得している可能性がある。抗HIV治療開始前に上述の薬剤耐性検査を迅速に必ず行い、結果が判明する前に医療費助成の制度が取得できて抗HIV治療を開始する場合にはTAF(またはTDF)とFTC(または3TC)にブーストされたDRVの組み合わせを選択することとなる3, 4)。