抗HIV治療ガイドライン(2023年3月発行)

XVI医療従事者におけるHIVの曝露対策

9.曝露後の予防内服に関する説明

 被曝露者に対して、以下の事項が説明されなければならない6)

  • 曝露後予防を行わなくても感染確率は0.3%程度である
  • 2000年以降の感染事例はゼロであり曝露後予防の有効性は示唆されている
  • 短期間の抗HIV薬の投与による副作用は非常に少ないが、曝露後予防を受けた医療従事者に稀に重大な副作用(腎結石、薬疹、肝機能検査値異常、汎血球減少、横紋筋融解、Stevens-Johnson 症候群、劇症肝炎、など)が報告されている6)

 対象者が女性の場合は妊娠についての考慮が必要であり、予防失敗で急性HIV感染症を発症した場合には胎児への感染リスクも高くなる点を含め、予防内服の期間を含む一定期間の避妊についても指導しければならない。妊婦に曝露後予防薬を投与した場合の胎児への安全性の懸念は残るも、米国ニューヨーク州のガイドライン 11)には妊娠中の曝露後予防は一般的に先天異常のリスクを増加させないと記載されている。表XV-1における第1推奨と第2推奨のレジメンはHIV感染妊婦の母子感染予防薬として推奨されている 23)。性別にかかわらずパートナーへの感染リスクを説明する。

 曝露後予防開始に際し、専門医との相談が推奨される状況を列挙した(表XVI-2)。ただし、専門医との相談が遅れる事により曝露後予防の開始に遅延があってはならないよう注意すべきである。

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