抗HIV治療ガイドライン(2023年3月発行)

XIIHIV/HBV共感染者での抗HIV療法

9.HIV感染者におけるHBVワクチン、HAVワクチンの推奨

 HBV感染の拡がりが深刻となりつつある現在、HIV感染者で、HBV感染の既往がない場合あるいは既往があってもHBs抗体が低値(< 10mIU/mL)の場合には、HBVワクチンの投与が推奨される(AII)14)

 DHHSではHBs抗体陽性・HBc抗体陽性の場合にはワクチンの投与は必要ないが、HBs抗体陰性・HBc抗体陽性・HBV DNA陰性の場合には、ワクチンを1回接種して1〜2ヵ月後に検査し、HBs抗体>100mIU/mLであれば追加接種せず、HBs抗体< 100mIU/mLであれば、通常のシリーズを完遂することが薦められている(BII)14)

 CD4数が低値の場合には、ワクチンによるHBs抗体獲得率が低くなるため、CD4数が350/μLを下回る前にワクチン接種することが望ましいとされているが(AII)14)、CD4数が低い場合でも接種により免疫を獲得することもあるので、ART導入後にCD4数が350/μL以上になるまで接種を遅らせる必要はないという(AII)14)。西田らの報告4)では、HIV感染者でのHBVワクチン標準投与(0, 1, 6ヵ月の3回投与)におけるHBs抗体獲得率は約40%に過ぎなかった。なお、同グループのHBs抗体未獲得者にHBVワクチンの2倍量投与を3回施行することにより約70%程度の症例で抗体獲得が得られたため29)、費用面で問題がなければHBVワクチン投与を積極的に施行すべきであろう。またHIV/HBV共感染者でHAV感染の既往が無い場合にはHAVワクチンの投与も強く推奨される(AIII)13-15)

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