抗HIV治療ガイドライン(2023年3月発行)

IX抗HIV薬の副作用

2.肝機能障害

 すべての抗HIV薬において肝機能障害を起こす可能性がある。無症候性の場合には投与継続しても自然に改善することがあるが、トランスアミナーゼが上昇してきた初期には注意観察をすべきである。

 ミトコンドリア障害をきたすNRTIの使用にて肝臓の脂肪変性を伴う肝機能障害を生じ、さらにこれらの肝障害は薬剤中止後も持続する可能性がある31)また、前項で述べた糖・脂質代謝障害を背景に起こる非アルコール性脂肪肝炎も肝硬変、肝癌へ進行することが言われており注意が必要である32, 33)。B型肝炎を合併するHIV感染者に、HBVに対する治療薬としても有効な3TC、FTC、TDF あるいはTAFなどの投与を開始した後、これらの薬剤を中止すると重篤な肝障害を引き起こしてしまう場合がある。またHBVやHCVとの重複感染者では薬剤の肝毒性が高まるため注意が必要である。ATVにおいては、UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)阻害により無症候性の非抱合型ビリルビン上昇が高頻度に認められるが、軽度の上昇であれば投与継続が可能である。しかし、黄疸や眼球黄染が出現し、症状が持続する場合には薬剤変更を考慮する。また、NVPでは、女性患者において肝障害を起す率が高いという報告がある34)。DHHSガイドラインでは、EFVとNVPは肝機能不全(Child-Pugh分類BまたはC)の患者には推奨されないと記されており、EFVでは移植または死亡に至る肝不全に進行する劇症肝炎が報告されているとしている35)。さらにddI(現在は発売中止)の長期曝露が食道静脈瘤を伴う非肝硬変性門脈圧亢進症と関連することが報告されており、長期投与を受けていた例には注意が必要である36)

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