抗HIV治療ガイドライン(2023年3月発行)

XIIIHIV/HCV共感染者での抗HIV療法

2.自然経過

(1)急性肝炎

 C型肝炎ウイルスに感染した場合、20〜40%(平均25%)は自然治癒するが、残りは慢性肝炎となる21)。HIV感染症にC型急性肝炎を合併した場合のHCV排除率は4〜26%と報告による差が大きいが、HIV非合併例に比べて低率である22-24。細胞性免疫不全がその大きな原因と考えられている25)。急性肝炎後のHCV排除にはNK細胞のIFN-γ産生能が影響を及ぼすことが報告されている26)

(2)慢性肝炎

 慢性HCV感染者の臨床経過は個人差が大きいが、16%が活動期を経て平均20年で肝硬変を発症し、その多くが肝癌を合併するとされている27)。一方少ないながら自然経過でHCVを排除できる症例もある。こういう症例はIL28B(IFN-λ3:肝細胞におけるInterferon Stimulated Geneの転写に大きな影響を及ぼす)のプロモーター領域にあるSNPが野生型であり、IL28Bの産生量が多い28)。ARTの導入例でも同様の報告がある29)

 我が国のHIV感染例の死因は、日和見感染症から非AIDS関連疾患、特にC型慢性肝炎とその合併症へと変化してきた。本邦の血友病患者のサーベイランス結果によれば、1997年以前の肝疾患による死亡率は14%であるが、1997年以降では肝疾患による死亡率は29%に増えていることが報告されている。また、2006年の調査ではHIVとHCVが共感染した血液凝固異常患者の死因はその9割以上(120/129)が肝硬変、肝細胞癌であることが確認されている13)

 現在血液凝固異常患者の死因としては非AIDS指標悪性腫瘍、心血管疾患、自殺などが問題になってきているものの、現在も年間数名が肝硬変・肝細胞癌で亡くなっている。

PAGE TOP