抗HIV治療ガイドライン(2023年3月発行)

XVI医療従事者におけるHIVの曝露対策

11.各医療機関での確認事項

 HIV曝露事象発生時のマニュアルは各医療機関の院内感染マニュアルの一部に組み込まれるべきである。曝露後には該当医療従事者が速やかにそのマニュアルを見て、その後の対応に進めるようにする。医療機関ごとに確認しておきたい問題点は以下の2点である。

  • 院内にHIV感染症の知識を持つ医師が存在するか?
  • 院内に抗HIV薬を処方できる体制があるか?

 被曝露者の対応に関する事項は、「曝露後対応が自施設内で可能な医療機関」と「曝露後対応が自施設内で不可能な医療機関」で異なることとなる。曝露後対応が自施設内で不可能な医療機関の管理者は、曝露事故が発生した場合に、迅速に院外のHIV専門家に相談したり、院外で抗HIV薬を入手できるよう他施設と連携できる体制を準備しておかなければならない。

 HIV感染症に慣れない医療機関における曝露事故は「一大事」であるが、被曝露者のプライバシーを保持することの重要性を忘れてはならないことを強調しておきたい。医学的対応に必要な範囲を超えて、院内の不必要な多数の関係者に曝露事故が伝わらないように配慮する必要がある。HIV患者数が欧米と比較して少ない日本であっても「医療従事者のHIV感染が曝露事故を契機に判明する」可能性は、現実的にありうる事を忘れてはならない。これは曝露事故における被曝露者のプライバシーを保持することが非常に重要である事の理由の一つである。

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