抗HIV治療ガイドライン(2022年3月発行)

V初回治療に用いる抗HIV薬の選び方

5.内服しやすさ(服薬率の維持)への配慮

 PatersonらはARTを開始した症例で血中HIV RNA量が400コピー/mL未満を達成できたか否かを服薬率ごとに検討した結果で、服薬率が95%を下回ると十分な治療成績が得られないことを示している(図V-1-1)68)。しかし、この報告の対象者は新規に治療を開始した者ばかりではなく、また現在では標準的でないrtvを併用しないPI(unboosted PI)を含む組み合わせに限定されている。より最近のARTにおいては血中HIV RNA量が200コピー/mL未満の達成率は、服薬率が90%以上で98.9%、服薬率80~90%では96.5%であったと報告されている(図V-1-2)69)ウイルス抑制に求められるアドヒアランスはレジメンによって異なるという報告もある70)もちろん、個々の症例において100%の服薬率を目指すべきことは言うまでもない。

 服薬率を維持するためのポイントは、患者のライフスタイルに合わせた薬を一緒に選ぶことである。関連する要素としては錠剤数、内服回数、食事の制限がある。1日の内服錠数が少ないほど服薬率とウイルス抑制率が高いというデータ71)の一方で、初回治療においてSTR(1日1回1錠)でも1日1回2錠でもウイルス学的効果は類似という最近の報告もある4)食事時間がまちまちな場合には食事の制限のない薬剤のほうが服薬アドヒアランスを保ちやすい。

 現在はSTRで初回治療が開始される割合が高くなり服薬率維持はより容易になったが、本人のモチベーションなくしては治療は成功しないため、ART開始にあたっては、無症状でも治療することの意義、服薬率の維持・通院の維持の重要性について患者に理解してもらえるよう説明する。U=U(III章参照)についても治療開始までに伝えるとよい。服薬率を維持するために重要と思われるポイントを表V-7に箇条書きにした。厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業「HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究」班では、「HIV診療における外来チーム医療マニュアル」を作成して服薬率維持のために医療従事者に必要なポイントを提供している72)

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