抗HIV治療ガイドライン(2023年3月発行)

VII治療失敗時の薬剤変更

4.薬剤耐性症例に対するSalvage療法

 薬剤耐性症例に対する治療変更に際しては、感受性が保たれた抗HIV薬を少なくとも2剤、できれば3剤併用し、このうち1剤は耐性バリアの高い薬剤(ブーストしたDRV、あるいはDTG・BIC)とすることが望ましい。NNRTIと2剤のNRTIによる初回治療に失敗した症例を対象とするサルベージ試験 20)では、87%の症例がNRTIとNNRTIに対する耐性を保有していたが、NTRIのうち少なくとも1剤の感受性は残っており、DTGとNRTI 2剤の組み合わせはLPV/rtvとNRTI 2剤の組み合わせより高い有効性・安全性を示した。NNRTIとTDFを含む2剤のNRTIによる初回治療に失敗した症例を対象とする別のサルベーシ試験 21)では、NRTIの感受性が残っていない症例も組み込まれており、DTGはDRVに対して非劣性であったが優越性は示されなかった。DRVよりDTGで耐性獲得が多く(96週でDTGは235例中9例、DRVは229例中0例)、TDF+3TCを維持する方がAZT+3TCに変更するより96週での治療成功率が高かった。

 多剤併⽤抗HIV 療法の臨床導⼊以前に単剤投与の治療歴がある症例や、度重なる治療失敗によって多剤耐性となった症例には、新規薬剤による治療が必要となる。既存の抗HIV薬に対し多剤耐性を獲得したHIV に対しては、新薬を取り⼊れたSalvage療法が唯⼀の治療法であるが、このようなSalvage 療法においても複数の有効な薬剤を組み合わせることが肝要で、有効な薬剤を⼀剤だけ追加した治療を⾏ってしまうと、追加した薬剤に対する耐性の出現を招いて治療の選択肢を狭める結果となりかねないことに注意を要する。感受性を維持している抗HIV薬の選択肢がほとんどない多剤耐性症例においては、専⾨医療機関に相談することが望ましい。

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