抗HIV治療ガイドライン(2023年3月発行)

IX抗HIV薬の副作用

6.中枢神経症状・精神症状

 NNRTIおよびINSTIでは中枢神経症状、精神症状に注意する。

 NNRTIでは特にEFVによる中枢神経系症状、精神症状が重要である。めまい、ふらつきは投与開始早期に出現し、軽度であれば2〜4週以内に自然軽快することが多い。この副作用の対応のために本剤の開始時には眠前投与が推奨されている。また、運転や高所での仕事などは避けておくほうがよい。内服開始後に夢が変化したことを自覚することも多く、はっきりした夢、悪夢などと表現されることが多い。また長期経過の中で抑うつ症状が出現することがあり、自殺念慮との関連も認められている78)ことから、投与開始前に精神科受診の既往なども確認しておくことも必要である。EFVは、肝酵素であるCYP3A4及びCYP2B6で代謝される。特にCYP2B6には516G>Tの一塩基多型が認められており、516TTの保因者では、516GT及び516GGの保因者と比べてEFVの血中濃度が上昇し、中枢神経系の副作用がより出現しやすくなる可能性がある79)

 DHHSガイドラインでは、精神疾患系の既往のある患者においてINSTIを使用した際に、稀ではあるが不眠や鬱、自殺企図といった報告があると記載されている35)。特にDTGは国内外で中枢神経系の副作用が報告されている。Boerらによると、ABCとの併用時に特にDTGの継続率が低かったことが示されている80)。DTG投与時の中枢神経系副作用による中止は、開始後1年以内が92.2%とほとんどを占め 81)特に女性や高齢者(> 60歳)で高かったという結果が得られている 82)。また、国内では矢倉らにより、代謝酵素であるUGT1A1における遺伝子多型とDTGの血中濃度の相関が示されている 83, 84)。BIC/TAF/FTCとDTG/ABC/3TCの比較試験ではBIC/TAF/FTCの方が中枢神経系の副作用が少なかったと報告されている 85)。いずれも限られた範囲内での報告であり、明確な要因もわかっていないためINSTIと中枢神経系の副作用の関連については、今後さらなるデータの蓄積が必要である。

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