抗HIV治療ガイドライン(2023年3月発行)

XIIIHIV/HCV共感染者での抗HIV療法

9.ARTのHCV感染症に対する影響

 ARTが慢性肝炎の自然経過に及ぼす影響は、HIV/HCV共感染患者の予後を考える上で重要な問題である。ART導入前後の肝組織標本の検討結果が最近報告された。これによるとART開始後にNKおよびNKT細胞が増え、それに伴って肝内HCV量が減少する71)

 RTの肝線維化に及ぼす影響に関して以前は弱い肝線維化抑制効果しかないとする報告が多かったが 27, 72)、ARTによってHIV RNA量とCD4数が十分にコントロールされている場合、肝線維化の進展はHIV非合併例と同様であるという報告が複数あり73-78)、ARTが肝線維化の進展を遅らせることは間違いなさそうである。最終的にEnd-Stage-Liver-Disease(ESLD)への進行を止めることはできない79)という報告と、ARTを継続することにより、肝疾患による死亡を減らすことができる80)という報告が混在する。

 一方、HCV共感染例であっても、ARTの継続期間が生命予後と関連のあること81, 82)も報告されており、HIV/HCV共感染症においてもARTが優先することに間違いはない。Mehtaらの報告によれば、HIV/HCV共感染症においては、50歳以上・女性・アルコール多飲歴・ALTが正常上限の2.5倍以上を持続すること・肝組織の壊死炎症及び脂肪化が強いことがF3以上の線維化の独立した危険因子として挙げられており、ARTは少なくとも悪化因子ではないとしている83)。C型肝炎に対するARTが重要であることが改めて示されているといえる。

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