抗HIV治療ガイドライン(2022年3月発行)

V初回治療に用いる抗HIV薬の選び方

6.わが国で実際に使用されている抗HIV薬の組み合わせ

 HIV診療の経験のある医師が実際にどのような薬剤を選択しているかについて、わが国の実態を紹介する。図V-2は、澤田らが毎年行っている「服薬援助のための基礎的調査」からのデータで、初回治療に処方された抗HIV薬の組み合わせを示している73)。ある程度まとまった症例数の処方状況として提示できる最新のものであるがこれすらも2021年3月までのデータであり、既に過去であることを認識して頂きたい。「ガイドライン」とは現段階で最も良いと思われる治療方針を示すもので、より良い治療法の開発や新しい副作用の懸念の出現により推奨薬剤は頻繁に変更されており、処方薬剤は時代によって大きな変動がある。一方において、ガイドラインにおける初回治療推奨薬が変わったとしても患者のアドヒアランスが良好でHIV RNAが抑制されており問題となる副作用も生じておらず患者が変更を希望しない場合には今までの治療を当面継続することは間違いではない。

図V-1-1 服薬率と抗HIV療法の成功率の関係
縦軸が治療成功率(%)、横軸が服薬率の棒グラフ。服薬率が95%以上のとき、治療成功率は78.3%。服薬率が90%-94.9%のとき、治療成功率は45.4%。服薬率が80%-89.9%のとき、服薬率は33.3%。服薬率が70-79.9%のとき、治療成功率は28.6%。服薬率が70%以下のとき、治療成功率17.9%。
新規治療および治療経験者を含む81症例で、rtvを併用しないプロテアーゼ阻害薬を含むARTを行った場合の治療成功率(開始4ヶ月目にHIV RNA量が400コピー/mL未満)と服薬率の関係をみたもの。
Paterson et al. Ann Intern Med. 133: 21, 2000 より作成。
図V-1-2 服薬率と抗HIV療法の成功率の関係
縦軸が治療成功率(%)、横軸が服薬率の棒グラフ。服薬率が90%以上のとき、治療成功率は98.9%。服薬率が80%-90%のとき、治療成功率は96.5%。
1915症例でART(FTC/TDF/EFV, FTC/TDF+RAL, FTC/TDF+DRV/rtv, FTC/TDF+ATV/rtv) を行った場合の治療成功率(開始12-18ヶ月目にHIV RNA量が2回連続200コピー/mL以上を失敗と定義)と服薬率の関係をみたもの。
Cordon LL, et al. AIDS Patient Care STDs 2015 Jul:29(7);384より作成。
表V-7 服薬率を保つための工夫
<服薬開始前~開始後1ヶ月>
  1. 無症候であっても早期に治療開始することの重要性、服薬率の重要性、通院・服薬中断のリスクを説明する
  2. 1日に内服する薬剤の実物を見せ、錠剤数・回数・食事制限を考慮して本人と一緒に薬剤を選択する
  3. 予測される副作用の種類、出現時期、経過を説明する
  4. 体調がおかしければいつでも電話で相談可能であることを教える
<服薬開始後1ヶ月以上してから>
  1. 受診ごとに何回飲み忘れ、あるいは時間のずれがどのぐらいあったかを聞く
    by 医師、看護師、薬剤師
  2. 副作用に関する問診
    QOLに影響するようなら他剤への変更を考える
  3. 飲み忘れる原因を分析し、工夫を考える
    • 外出時薬を持って行くのを忘れる
    • 飲酒して帰宅すると、内服するのを忘れて寝てしまう
    • 内服したかどうかわからなくなる
    • 休日昼まで寝ていて朝の薬が飲めない、など
  4. どうしても薬が手に入らない場合(震災など)には通常通りの内服後、一定期間中断した方が1日おきに内服して長持ちさせるよりも薬剤耐性ウイルスを誘導しにくいことを伝える
図V-2 わが国での初回ARTレジメンの変化
2017年から2021年までの割合グラフ。2017年のときn=684で、TDF/TAF+FTC+RALは約11%、TDF/TAF+FTC+DRV+RTV/PCXは約3%、TDF/TAF+FTC+EVG+cobiは約19%、TDF/TAF+FTC+DTGは約23%、ABC+3TC+DTGは約38%、その他が9.3%。2018年のときn=673で、TDF/TAF+FTC+RALは約13%、TDF/TAF+FTC+DRV+RTV/PCXは約4%、TDF+FTC+EVG+cobiは約20%、TDF/TAF+FTC+DTGは約37%、ABC+3TC+DTGは約24%、その他が3.7%。2019年のときn=397で、TDF/TAF+FTC+RALは約19%、TAF+FTC+PCXは約6%、TAF+FTC+EVG+cobiは約18%、TDF/TAF+FTC+DTGは約40%、ABC+3TC+DTGは約15%、その他が1.5%。2020年のときn=420で、TDF/TAF+FTC+RALは約9%、TAF+FTC+PCXは約5%、TDF/TAF+FTC+DTGは約18%、ABC+3TC+DTGは約9%、TAF+FTC+BICは約53%、その他が7.1%。2021年のときn=448で、TDF/TAF+FTC+RALは約3.7%、TDF/TAF+FTC+DTGは約7.1%、ABC+3TC+DTGは約2.6%、TAF+FTC+BICは約81.2%、3TC+DTGは約3.1%、その他が2.2%。
澤田ら「抗HIV療法と服薬援助の為の基礎的調査」(2021年 日本エイズ学会、抄録番号O-C02-06)より作成

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