抗HIV治療ガイドライン(2022年3月発行)

XVI医療従事者におけるHIVの曝露対策

5.曝露事象から予防内服開始までの時間的猶予

 最適な予防効果を得るためには曝露から予防内服までの時間的間隔を出来るだけ短くすべきである。動物実験の結果では曝露後24時間から36時間以降に曝露後予防を開始すると有効性が劣るとされるが、ヒトについては曝露後36時間以降に開始した曝露後予防の効果を否定する報告もないため、曝露から長期間(たとえば1週間)が経過した場合であっても曝露後予防を検討してもよい。

 科学的なエビデンスは皆無であるが、複数のガイドラインが曝露後数時間以内の開始が重要としている。米国CDCガイドラインには「PEP should be initiated as soon as possible, preferably within hours of exposure」と記載され、時間としては「数時間」と記載されている6)。米国ニューヨーク州のガイドライン(2021年)には「An HIV exposure is a medical emergency and rapid initiation of PEP—ideally within 2 hours and no later than 72 hours post exposure—is essential to prevent infection.」と記載され、「2時間」の目安が示されている11)。また2008年の英国のガイドラインには「PEP should be commenced as soon as possible after exposure, allowing for careful risk assessment, ideally within an hour」と記載され、「1時間」の目安が示されている12)。なお、2014年の英国の調査では、HIVの予防内服をした者のうち89%(535/589)が24時間以内に内服を開始し、感染事例はなかったと報告されている13)

 エビデンスはないものの、理論的に予防内服は「可能な限り速やかに」行う必要がある事は間違いない。したがって、夜間や週末を含めたすべての時間帯で、曝露後予防内服が対応可能な体制を確立する必要がある。

 尚、曝露後72時間以降では内服を推奨しない場合が多いが、非常にHIV伝播のリスクが高い場合には1週間後でも内服開始を考慮してもよい6)

 判断が困難な場合には、曝露者の同意後、1回目の内服を実施する方法もある。それにより2回目の内服まで(例えばアイセントレス®;RALを選択した場合には12時間の)専門家と相談する時間的余裕が確保される。

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