抗HIV治療ガイドライン(2022年3月発行)

XIIIHIV/HCV共感染者での抗HIV療法

10.ARTと薬剤性肝障害

 HIV/HCV共感染例では、ART施行時に薬剤性肝障害の頻度が高い。PIと旧来のNNRTI(NVP、EFVなど)はトランスアミナーゼ上昇をきたす確率が高い。

 ART使用時の肝障害はHCV共感染例で増加することも明らかにされている。例えば、肝障害発生率は、HIV/HCV共感染例では54%であったのに対して、HIV感染のみの例では39%であった79)。一般にはrtvを含む処方で肝障害が多いが、共感染例ではrtv以外のPIを含むARTで重症肝障害が多いという矛盾したデータも出ている(共感染例では9.4%であったのに対して、HIV感染のみの例では2.7%であった)。NNRTIは一般に肝障害が比較的少ないが、NVPで最大20%の共感染例でALT上昇(5~10倍)の報告があり80)、HCVあるいはHBVの共感染例やPIの同時使用で頻度が多いとされている81)。INSTI、DORなどの新しいNNRTIが処方されるようになり薬剤性肝障害の頻度は減少してきている。線維化の進展速度もバックボーンにNRTIを選択した方が緩やかであるという報告もされている82)

 ART施行後肝障害が出現・軽度増悪した場合でも、ARTを必ずしも中断する必要はない。肝障害はART継続下でも軽快する場合も多いとされているからである83)。しかしながら、ART施行後の肝障害は肝線維化の進展した症例ほど高頻度に出現するため84)、特に肝硬変の症例に対してARTを行う際には肝機能のモニタリングを頻繁に行い、肝障害の出現・増悪時にはARTの中断・薬剤の変更を行う必要がある。ALTが正常上限の5~10倍を示した場合は、被疑薬を中止する。ただし、投与中止前に肝機能検査値上昇の原因を探る必要がある。後述の免疫再構築症候群の場合は、薬剤を中止せずに投与を続けることが望ましいからである。

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