抗HIV治療ガイドライン(2025年3月発行)

XVI医療従事者におけるHIVの曝露対策

8.PEPに関する説明

 被曝露者に対して、以下の事項が説明されなければならない7)

  • PEPを行わなくても感染確率は0.3%程度である
  • 2000年以降の感染事例はゼロでありPEPの有効性は示唆されている
  • 短期間の抗HIV薬の投与による副作用は非常に少ないが、PEPを受けた医療従事者に稀に重大な副作用(腎結石、薬疹、肝機能検査値異常、汎血球減少、横紋筋融解、Stevens-Johnson症候群、劇症肝炎、など)が報告されている7)

 対象者が女性の場合は妊娠についての考慮が必要であり、予防失敗で急性HIV感染症を発症した場合には胎児への感染リスクも高くなる点を含め、PEPの期間を含む一定期間の避妊についても指導しければならない。妊婦にPEP薬を投与した場合の胎児への安全性の懸念は残るも、米国ニューヨーク州のガイドライン22)には妊娠中のPEPは一般的に先天異常のリスクを増加させないと記載されている。表XV-1におけるレジメンはHIV感染妊婦の母子感染予防薬として推奨されている4)。また、性別にかかわらずパートナーへの感染リスクを説明する。

 PEP開始に際し、専門医との相談が推奨される状況を列挙した(表XVI-2)。ただし、専門医との相談が遅れる事によりPEPの開始に遅延があってはならないよう注意すべきである。

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