抗HIV治療ガイドライン(2025年3月発行)

XI結核合併症例での抗HIV療法

要約

  • HIV感染症では結核の合併リスクが高い。結核患者ではHIV検査は必須であり、HIV初診者では結核感染の有無を調べるべきである。
  • 結核合併例の治療では、
    1. 薬剤の副作用
    2. リファマイシン系薬剤と抗HIV薬の相互作用
    3. 免疫再構築症候群の合併
    の3点に注意が必要である。
  • 結核の治療開始後、早期にARTを開始することにより、死亡が減少するとの報告から、ARTの開始時期は早まっている。

1.疫学

 細胞性免疫は結核の感染防御を担っており、この機能が著しく低下するHIV感染症では結核の感染・発病のリスクは極めて高い。日本の結核罹患率は2021年に人口10万対9.2と10を切り、ようやく低蔓延国の仲間入りをし、2023年には8.1となった。しかし、欧米では罹患率が5以下の国もあり、米国は2.9である。日本の結核罹患率は先進国の中では依然として高い。HIV感染者数は減少傾向が見られるが、HIV感染症合併結核の症例に遭遇する機会は常にある。

 結核患者においてHIV検査を実施した患者は2023年は650人で、新登録結核患者の6.4%にあたり、HIV検査がほとんど行われていない実態が見られる。このうちHIV陽性は14人で、新登録結核患者の0.1%となっている。毎年、0.2%前後の陽性率である1)AIDS拠点病院に対する泉川らの調査では、結核合併例の減少傾向が見られる2)

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