抗HIV治療ガイドライン(2025年3月発行)

XIIHIV/HBV共感染者での抗HIV療法

5.HIV/HBV共感染における治療薬の選択

 HIVまたはHBV感染症に対する治療適応がある場合には2剤以上の抗HBV活性を有する多剤併用抗HIV療法を始めることとなる(表XII-2)7-9)。テノホビル(TDFもしくはTAF)と、エムトリシタビン(FTC)もしくはラミブジン(3TC)の2剤を含むARTレジメンで治療することが推奨される(AI)7, 8)。抗HBV作用薬が3TCもしくはFTCだけの治療は推奨されない(AII)7, 8)。また、ARTレジメンを変更する際は抗HBV活性のある薬剤を継続するべきである(AII)7, 8)。テノホビルはwild-typeのHBVやラミブジン耐性HBVに対しても有効である7, 8)。TAFはTDFよりも腎・骨への悪影響が少ないといわれ、HIV/HBV共感染例のSwitch studyではTDFを含むレジメンからEVG/cobi/TAF/FTCに変更してもHBV抑制は維持・達成され推算糸球体濾過量(eGFR)や骨マーカーは改善した14)。HIV/HBV共感染例で初回治療にTAF/FTC/BICとTDF+FTC+DTG の2群でHBV関連マーカーの経過をみたランダム化比較試験(ALLIANCE試験)では、96週の観察期間におけるHBe抗原のセロクリアランス率およびセロコンバージョン率はTAF 群で有意に高かったことが示されている15)

表XII-2 HIV/HBV共感染患者に対するHIV治療の考え方
  治療薬
推奨
  • NRTIとしてTDF/FTC,TAF/FTCまたはTDF+3TCを使用(AI)。
  • HBVの薬剤耐性化を防ぐために、3TC, TDF, TAF, FTCを単一の抗HBV薬として使用しない。
代替
  • 「TDFまたはTAF」の使用が好ましくない場合は、ETVを抗HBV薬として使用し、同時に十分なHIV抑制作用を持つ抗HIV治療を併用する(AII)。
  • 3TC耐性のHBVを有する(または疑われる)患者では、ETVを0.5mg/日から1.0mg/日へ増量する。

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