XIIHIV/HBV共感染者での抗HIV療法
要約
- HIV感染者がHBVに共感染した場合、HBV感染症の病期進展は速やかとなり、肝硬変、肝癌への進展が早いことが判明している。このためHBV単独感染よりも早期のHBV治療が求められる。
- HIV全症例においてHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体をチェックしB型肝炎の合併の有無・既往を確かめる必要がある(AIII)。また、HBc抗体のみが陽性の場合には、血中HBV DNA量を測定しoccult HBV感染の確認をしておく(BIII)。
- HIV/HBV共感染の場合のARTレジメンはHIVとHBV双方に効果のある2剤を含めた組み合わせを原則とする(AI)。
- HIV/HBV共感染患者もしくはHBV既往感染者に対して免疫抑制・化学療法もしくはHCV重複感染治療をおこなう際には、HBVの再活性化に十分注意する。
- 現在使用される2剤療法(CAB+RPV注、DTG/RPV、DTG/3TC)は、臨床試験においてHIV/HBV共感染例が除外されているため、開始前にB型肝炎の検査が必要である。HBV感染歴がある場合、HBVに活性のある2薬剤を含むレジメンから2剤療法に変更する際は、ALTを含む定期的な肝機能検査や必要に応じたHBV DNA検査を考慮することが重要である。
1.疫学
世界的には、HIV/HBVの共感染者はHIV感染者の10%に存在すると推定されている1)小池らによる2007年の全国調査では、HIV感染者のHBV感染合併率は6.3%であり、そのうちMSMでは8.3%がHBVに共感染しているとされている2)。水島らの報告では、非HIV感染MSMを対象とした研究で、テノホビルベースのPrEPを実施しない群において年間3.8%がHBVに感染した3)。HBV感染の有病率は地域や対象となる集団により異なるが、本邦ではHBVワクチンの接種率は非常に低いため、遭遇する可能性が高いと考える必要がある。